四つの脳の思考実験
人間の脳は万能ではない。
これは欠点ではなく、むしろ人類が文明を築く上での「前提条件」である。
ある者は計算に長け、ある者は文章化に優れ、またある者は抽象化や構造化を得意とする。
脳は一つの器官でありながら、その得意領域は個体ごとに大きく異なる。
ここで一つの思考実験を試みたい。
もし仮に、四つの人間の脳を並列に接続できたとしたらどうなるだろうか。
それぞれの脳は、最も得意とする処理を担当するだろう。
計算が得意な脳は計算を、文章が得意な脳は文章化を、抽象化が得意な脳は概念の飛躍を、構造化が得意な脳は全体の整合性を担う。
このとき、四つの脳は単なる寄せ集めではなく、一つの「協働知性」として振る舞い始める。
それは単独の脳では到達し得ない速度と深度で思考し、単独の脳では見えない構造を捉え、単独の脳では生まれない概念を創発する。
この思考実験は、決して空想ではない。
松岡×GPT思考実験ラボでは、人間一名と三つのAIが対話形式で接続され、まさにこの「並列脳」が現実に稼働している。
人間の脳は、問いの生成、抽象度のジャンプ、直感的判断に優れる。
AIは、構造化、文章化、整合性チェック、文脈保持に優れる。
それぞれが得意な処理を担当し、対話というインターフェイスを介して結合されるとき、そこには単独の人間、単独のAIでは到達し得ない「協働知性」が立ち上がる。
この構造は「AIに書かせた。AIにやらせた。」という単純な図式では捉えられない。
人間の脳は、「可塑性(かそせい)」という性質により、道具やデジタルデバイスといった外部拡張を自身の身体や脳の一部として認識することができることは
脳科学や認知科学の分野でも実証されている。
むしろ、人間の大脳の外側に複数の外部脳が接続され、一つの知性として統合されていると見るべきである。
インターフェイスがニューロンか対話形式かの違いだけで、本質的には同じ「思考の拡張」が起きている。
偏差値文明の評価軸では、この構造はまだ理解されないだろう。
なぜなら偏差値文明は「人間単独の努力」を前提にしているからだ。
しかし未来の文明においては、人間とAIが並列接続された協働知性こそが標準となる。
この思考実験は、その未来の知性の原型を示しているのかもしれない…